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喋らない俺、喋る俺、喋らない俺

俺は子供の頃、人見知りが激しく無口で喋らないタイプの人間だった。
正確には喋ることもあったのだが、俺が前にしゃしゃり出ることでトラブルが続発してしまうので、
次第に心を閉ざし、人とかかわらないようになっていったのである。

だから、俺は寂しかった。
友だちと遊びたいと思っても、友だちがいないので遊ぶことができない。
普通、人を避けている人は、友達なんか煩わしくていなくて結構なんて思われるのだろうが、俺はその逆だった。

学生時代、全く友だちがいなかったわけではなかった。
ゲームやアニメの話をする、いわゆるオタク友達が、1人2人いて、自由時間や放課後はほとんどその人とばかり関わって遊んでいた。

だから、そのオタク友達とだけなら、すごく親しかったし、仲が良かった。
しかし、男の友達というには、ちょっと薄っぺらで、俺は物足りなかった。

オタク友達と遊んでいたわけだが、それなりには面白かった。
彼らとしか共有できないだろうゲームやアニメの話題で盛り上がり、他の人にはわからないだろうディープな話で友情を深める。
俺の小中学生はそんな生活を送っていた。

高校では心を閉ざしすぎて、クラスに打ち解けるのに4ヶ月以上かかった。
打ち解けるきっかけになったのは、9月にあった宿泊研修だ。
それまで一言も会話をしたことのないクラスの人と同じ部屋で一夜を明かさなければならず、嫌でも会話せざるを得なかった。これがきっかけで打ち解けたのだった。
このとき、できた友達のうち1人とは、高校卒業後、大学卒業後も親しく付き合っていくことになる。

大学に入ってからは、ちょうどよいオタク友達がいなくて、友達はできなかった。
お金が勿体無いので、授業にだけは真面目に出ていて、はたから見ると勤勉な学生だった。
だが、友達ができることはなく、寂しい生活が待っていた。

大学2年になり、ゼミに所属することになった。
俺が所属したゼミには、普通の人が大半であったが、端っこの方にはいかにもな風貌のオタク連中が固まっていた。
ほとんどの人が体格はヒョロヒョロのもやしで、どこか挙動不審で、近寄りがたい空気を出している。一人太いのもいたが。

俺もオタクの端くれであるものの、これらオタク連中の輪の中に入っていくことはできなかった。
入れる空気じゃなかったし、俺はオタクだが、蒸れるのが苦手な孤独一匹狼タイプの人間だ。

ちなみにゼミ合宿のときには、オタク連中全員が何らかのゲーム機とゲームをリュックサックに詰め込んできており、持ってきたゲームはロックマンとか魂斗羅とか、いかにもオタクが好みそうなものばかり持ってきていた。
まあ、今思えば、俺も同じ穴の狢なわけだが。
当たり前の話だが、俺はゲーム機は持って行くなんてことはやってない。

大学卒業後は、就職にも見事に失敗し、フリーターになるわけだが、ますます人と関わる機会が減っていった。
バイト先と家を往復するだけの、代わり映えのしない日々。
そこには、何も生まれなかった。

転機が訪れたのは2007年1月。
ゲーム実況なるものが、ネットの片隅で盛り上がっているのに直に触れ、俺もやってみたいと思い、即座に機材などを準備した。
ここらへんの話は何度も書いているが、もともと寡黙な俺がゲーム実況をやりたいという、実に無謀なことをやろうとしていたのである。

2007年4月、俺はゲーム実況を始めた。
最初は喋れなかったが、他の人が見ると案外、喋れていたらしい。
寡黙で人前でしゃべることをしない人間が、ゲームを前にすると、どうやら喋ることができるらしい。
因果なものである。
若きの日の俺は、ゲーム実況で取るリアクションが面白がられ、たくさんのリスナーが付いた。
絶頂期には毎回100人ものリスナーが夜中にもかかわらず、見に来たものだった。

俺は信じられなかった。
喋れない人間が、ゲーム実況で、人を集めるということを、どうしても信じられなかったものだ。

そこから俺は、「俺は面白いんだ」と勘違いするようになっていく。
そしてその頃、ゲーム実況の成功のおかげで自身がつき。実生活でも喋るようになっていった。

「俺は面白いやつなんだ」

俺は当時、本気でこう思っていた。

それは当然のことだろう、俺がゲーム実況配信をやりだせば、100人ものリスナーが集まってくるのだ。
そう、勘違いして頭に血が上るのも無理はない。

しかし、所詮勘違いは勘違い。

3年後、うだつのあがらなくなったゲーム実況を引退し、そのかわり、静かな生活を手に入れた。

その後、俺はまた根暗な、喋らない人間へと回帰していった。

「結局俺は、面白くもなんともないやつだったんだ。一体あのときのあれはなんだったんだ」

こんな風に考えるようになっていった。

もう、俺が再び喋るようになることはまずないだろう。

そんな人生の山あり谷ありが、俺にはあったのだ。
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